福岡高等裁判所 昭和27年(う)2371号・昭27年(う)2370号 判決
民法第八百十八条第三項の規定により、親権は父母の婚姻中は、原則として父母が共同してこれを行うことになつてはいるが、刑事訴訟法においては同法第二十八条中法定代理人に関する規定により手続の迅速と簡明を期するために、その各自が単独で法定代理人として訴訟行為を代理し得ることになつているのであるから、同法第二百三十一条第一項の規定による被害者の法定代理人の告訴権も、法定代理人としての親権者が二人あるときは、その各自が単独で被害者のために独立してこれを行使し得ることは多言を要しないところである。してみれば所論、原判示第三乃至第五、第七乃至第九、第十一、第十五及び第十六、第十九の本件各親告罪の事実について各被害者の親権者二人のうちその父若しくは母のいずれか一方がその法定代理人としてした右各告訴は、前段説明したところにより固より有効であるからこれを以て有効に訴訟条件の完備したものとしてなされた原審の訴訟手続は正当であつて所論のように原審の訴訟手続に法令違反の事実は存しない。論旨は前掲刑事訴訟法第二十八条中法定代理人に関する規定を無視した謬論であつて、採るに足りない。
(中略)
対審の公開停止は、日本国憲法第八十二条第二項の規定に従い、事案の内容に鑑み「裁判所が裁判官の全員一致で公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合に」行い得るのであるから、公開停止の決定は刑事訴訟法上、裁判所の職権に属し訴訟関係人の申立によつてなすべきものではないと解するのが相当である。尤も前記公判調書に検察官から本件対審の公開を停止されたいと申し出た旨の記載があるけれども、それは単に裁判所の職権の発動を促したに過ぎないのであつて刑事訴訟法にいう「申立」にあたらないものというべきである。してみれば前記のとおり原審裁判所が訴訟関係人の陳述を聴かないで公開の停止を決定したことはまことに正当であつてそのことは何等前記刑事訴訟規則第三十三条第一項の規定に違反するものでもなく、又所論のように憲法に違反するものでもない。従つて右公開禁止が憲法に違反することを前提としてその非公開中に取り調べられた各証拠が無効であるという論旨も理由がない。
(後略)